ベントレー ブルックランズ
とことん目立つと言えば、彼が所有するクライスラー ニューポートです。この車は1962年にデトロイトで製造され、陸のヨットと呼ばれました。彼はロードラリー仕様のシボレー カマロも所有していますし、過去には何度かランボルギーニ LM002を所有したことがありました。1980年代に登場したLM002は角ばったボディが印象的なV12のオフロードカーで、彼が所有したうちの1台は、後にビヨンセの所有となりました。
パープルのポルシェ 911 GT3 RSも彼の愛車で、高速ラップを競うためにニュルブルクリンクに保管されています。オレンジの同モデルを駆る親友とふたり、ドライバーの腕を競い合います。
一方、地元を目立たず走りたいときはBMWの電気自動車、i3を愛用していました。「普段使いにとても便利でした」幅広い用途に対応する車ではなかったものの、通勤にぴったりだったそうです。
2010年のベントレー ブルックランズの控えめさもアンドレアスのお気に入りです。比類なき超高級クーペのブルックランズ。その最後の左ハンドル車が彼の愛車です。
控えめで深みのあるタングステンのエクステリアにバーガンディのインテリアが映えます。インストルメントパネルも洗練されています。「色や素材が多すぎてはだめなのです。だからといってブラックのインテリアとカーボンファイバー、というのもありえません」
「このクルマは4シーターで美しく、時代を感じさせません」自宅のあるスイスで乗るのはブルックランズです。スキンヘッドで全身にタトゥーを入れたチェーンスモーカーの巨漢でも、目立ちたくないときはあるのです。「この車が持つ素晴らしさや歴史を知る人は少ないでしょう。スイス人には理解しがたいかもしれません。ここは自動車大国ではないですから」
ブルックランズはインテリアもエクステリアも優美そのもの。流行を追ったデザインとは一線を画します。車というのは、スクリーンやディスプレイを見たときに古さを感じやすいと彼は言います。
ブルックランズではスクリーンやディスプレイが目に付きません。優れたHi-Fiオーディオを備えていますが、ドットマトリックスディスプレイはヒンジ付きのヴェニアパネルで隠されています。衛星ナビは革張りのカバーが開くと電動で立ち上がります。2010年当時は最先端技術だったのでしょう。そもそもナビの電源ボタンに触ったことがないとアンドレアスはなぜか誇らしげです。
「この車はどんなシーンにもぴったりです。母を訪ねるときも、結婚式に参列するときも、男同士で旅行するときもね」
本日はアンドレアスの故郷を巡るドライブ。雨に濡れた秋の朝、チューリッヒの中心街は静まりかえっています。郊外を走り抜け、ルツェルン近郊のエースカフェに向かいます。エースカフェはクルマ好きやバイク好き、アウトローに憧れる人々が集う人気のスポットです。
おしゃべりと昼食を楽しんだ後は、山と森と湖が織り成すスイスの絶景が待っています。
ブルックランズはベントレーのDNAを受け継ぎ、優雅に走る車です。アンドレアスはブルックランズをサーキットやタイトなヘアピンカーブを走るための車だとは思っていません。本日のルートはそんなブルックランズにぴったりなズステンパス。標高2,224メートルの峠を目指します。
「曲がりくねった峠道をひたすら走って行く喜びは格別です。ウインドウを4つとも全開にすると、ピラーがないので視界をさえぎるものがありません。山々を眺め、自然の香りや音を感じることができます。スイスの絶景がストレスを忘れさせてくれます」
ブルックランズの生産期間は2008年半ばから2010年初めまでと短く、この車がアルナージシリーズ最後のモデルとなりました。最高出力537PS、最大トルク774lb ftにパワーアップした6.75リッターV8ツインターボエンジンが2,750kgの巨体を静止状態から5.0秒で時速60マイルまで加速させます。
どっしりと動きそうもない巨体を押し出すようなとてつもないパワーがたまらないとアンドレアス。「ストレスとは無縁のクルマです。アクセルを踏むと、エレベーターで一気に上昇しているような感覚になりますから、走り出すときは心の準備が必要です」
ブルックランズと現代のコンチネンタルシリーズの共通点は、優雅さと上品さ、強大なパワートレイン、堅実さ、優れた技であるとアンドレアスは考えます。
3面で構成されるローテーションディスプレイも彼のお気に入りです。必要に応じてタッチスクリーンの面にしたり、アナログメーターの面にしたり、ゴージャスなヴェニアの面にしてすっきりとしたインテリアを楽しんだりできます。
この3面ディスプレイは工場内で「トブラローネ」と呼ばれています。スイスの有名な三角チョコの名称で呼ばれていると聞いてアンドレアスは満足げです。
ブルックランズはベントレーが紡ぐ輝かしい過去と未来を繋ぐクルマです。アンドレアスはベントレーの創業時に思いを馳せます。「このクルマの重量やトルクや素材にベントレーの歴史が宿っています。1世紀以上も歴史を紡いできたということに感銘を受けます」
個人的な思いもあるといいます。「私はベントレーボーイズの物語が好きです。ロック好きの友人たちがいまして、クルマ、ドライブ、ライフスタイル、旅行など、ベントレーボーイズと共通の趣味を楽しんでいます。現代は何かと規則が厳しいので、あまり無茶はできませんが」
「それでも、なかなか良い人生だなと思います。やりたいことをやり、やりたくないことはやらない、それが私のモットーです。周りからは今のシステムに馴染めなかった人と言われます」
ベントレーのカラーと素材と仕上げを担当するチームはどのようにして塗装の色合いを生み出すのでしょうか?インスピレーションの源はどこなのでしょうか?CMFチームの責任者、アンドレア・ジェンセンが説明します。
ミラノのショールームに置かれた1985年式ミュルザンヌ ターボ。オフホワイトのその車は、静かに終わりのときを待っているようでした。ですが、リカルド・ポッツォーリには違う未来が見えていました。
20年以上ぶり、そして106年にわたる歴史の中でわずか5回目となるベントレー・ウィングのデザイン刷新を行いました。